半年ぶりにあった会った祖父は僕のことを忘れていた。
名前を伝えても「知らねぇなぁ」とのこと。口調は変わらないようだ。
11月に入院して以降,感染症対策で同居家族以外は会えない措置が院内で取られていたため,会うこともできなかった。
普段ならメールで連絡していたのだが,もう操作方法を忘れて,読む事も送る事もできなくなったらしい。充電器に繋がれたまま通知ランプが付いた姿は今の祖父と似たものを感じた。会う人間や触れるものが少ない環境だと人は衰えるとは聞いたことはあったがこれ程とは。
弟のことは覚えていた。あちらの出身大学のネームバリューの強さを感じる。
僕はどこで仕事をしているのか聞かれた。半年前に千葉へ出張することが多かったというのを覚えていたらしく,しきりに「千葉じゃないのか?」と聞かれた。
人はいつか亡くなるのはだいぶ前から直面しているので分かるのだが,いよいよかと思うと寂しくなった。
もう誰も知的財産が生まれた時のそれを知らないという状態になってしまった。
話したいこともあったがもう難しい様子で,退出時間も近くなり病室を後にした。
生きてても会えなくなるのか。